卒業製作@八-最終回 『ぱっちぃカー』は欠陥車
2015年02月23日 卒業製作@八-最終回 『ぱっちぃカー』は欠陥車
八王子チーム 設計演習/卒業製作の授業です。
卒展も終え、メンバーとぱっちぃカーはメイカーズラボに戻ってきました。
2/18に走行会を実施しました。

走行準備の整備をしている所です。
この日はあいにくの雨でしたが、軒下を往復してメンバー全員乗車しました
部品がもげました。
これはユニバーサルジョイントと言う部品のピンです。

量れていなかったコーナーウェイトを量りました。
コーナーウェイトとは車輪それぞれの荷重の事です。
ぱっちぃカーは乗用車よりずっと軽いので、体重計が3つあれば量れますね
Fr、RrLH、RrRH はそれぞれ前輪、左後輪、右後輪を意味します。
黒字は空車、赤字はドライバー込みの値で、単位はkgです。
後の荷台に100kgまでの貨物を積載するので、ドライバーだけではやや前輪荷重の方が大きくなります。
これは予定通りです。
さて
工業製品としてのぱっちぃカーには色々と問題があります。
完成前に発見できた部分は可能な範囲で対策をしています。
例えばモーター駆動の動力を伝える電磁クラッチと言う部品ですが、設計担当が仕様書を読み誤り、許容トルクが不足していました。
電磁クラッチの買い直しは時間的に無理だったので、追加工の上搭載位置を変更することで対処しました。
専門的にいうと1次減速後に付いていたのを1次減速前に移動することで駆動トルクの低減をはかりました。
目論見通りの効果が得られましたが、突貫で作業したため追加した旋盤部品の精度が悪く、電気モーターではスムースに走行することが出来ません
しかしこれは設計通りに精度良く部品が作れれば解決する問題、つまり「製造不良」と言う事になります。
一方ユニバーサルジョイントのピンはどうでしょう。
開発ノートで当該箇所の設計記録を見てみましょう。
担当者が色々と計算し、部品の選定をした形跡があります。

一旦選定したものを最後により小さい物に変更しています。
そして走行会の日、もげたところの強度計算を全員で確認しましたところ、強度が不足していることが判明しました。
強度計算のミスにより、ジョイントの選定を誤ったのです。
これは製造不良ではなく「設計不良」なので、何度部品を作り直し交換しても同じように壊れます。
つまりぱっちぃカーは通常の使用で必ず壊れる設計の欠陥車なのです。
しかしそれで良いです
何故ならそれは挑戦した結果だからです。
この設計を始める時、担任はこう言いました。
「ミニマム(最小)に設計せよ
」
ぱっちぃカーは目標質量を100kgとし、ホイールベース(前後輪間の距離)、トレッド(左右輪間の距離)を最初に決め、可能な限り荷台を低くするようにと言う条件を出し、更に予算を最初に提示しました。
設計者は可能な限り軽く、小さく、安く作ることを求められたのです。
これは設計の仕事では実に当たり前の事です。
なんの条件もなく壊れない車を緩〜く作ることなど実は簡単な事なんです。
設計者たちは挑戦しました。
そして失敗しました。
質量も目標を14kgオーバーしました。
実はこれ、すべて担任のシナリオ通りです
これだけの条件で初めて設計する物が完璧なはずがない事を私は知っていました。
目標質量の100kgもいけそうでいけないラインをわざと狙いました
これによって最後に何故壊れたか。どうすれば14kg軽くできるか。
メンバーは自分たちの設計の結果を検証することが出来ました。
そしてやり直しのチャンスもなく、悔しい想いを持ったまま社会へ出ていきます。
エンジニアは常に悔しくて口惜しいものです。
エンジニアはいつも復讐に燃えています。
エンジニアのたまご、いっちょあがりです

『ぱっちぃカー』プロジェクトはこれで終りますが、設計に終りはありません。
メンバー達は4月から、それぞれの会社でリベンジをかましてくれる事でしょう。
以上、担任中島がお届けしました〜
おしまい
卒展も終え、メンバーとぱっちぃカーはメイカーズラボに戻ってきました。
2/18に走行会を実施しました。




これはユニバーサルジョイントと言う部品のピンです。

量れていなかったコーナーウェイトを量りました。
コーナーウェイトとは車輪それぞれの荷重の事です。
ぱっちぃカーは乗用車よりずっと軽いので、体重計が3つあれば量れますね

Fr、RrLH、RrRH はそれぞれ前輪、左後輪、右後輪を意味します。
黒字は空車、赤字はドライバー込みの値で、単位はkgです。
後の荷台に100kgまでの貨物を積載するので、ドライバーだけではやや前輪荷重の方が大きくなります。
これは予定通りです。
さて
工業製品としてのぱっちぃカーには色々と問題があります。
完成前に発見できた部分は可能な範囲で対策をしています。
例えばモーター駆動の動力を伝える電磁クラッチと言う部品ですが、設計担当が仕様書を読み誤り、許容トルクが不足していました。
電磁クラッチの買い直しは時間的に無理だったので、追加工の上搭載位置を変更することで対処しました。
専門的にいうと1次減速後に付いていたのを1次減速前に移動することで駆動トルクの低減をはかりました。
目論見通りの効果が得られましたが、突貫で作業したため追加した旋盤部品の精度が悪く、電気モーターではスムースに走行することが出来ません

しかしこれは設計通りに精度良く部品が作れれば解決する問題、つまり「製造不良」と言う事になります。
一方ユニバーサルジョイントのピンはどうでしょう。
開発ノートで当該箇所の設計記録を見てみましょう。


一旦選定したものを最後により小さい物に変更しています。
そして走行会の日、もげたところの強度計算を全員で確認しましたところ、強度が不足していることが判明しました。
強度計算のミスにより、ジョイントの選定を誤ったのです。
これは製造不良ではなく「設計不良」なので、何度部品を作り直し交換しても同じように壊れます。
つまりぱっちぃカーは通常の使用で必ず壊れる設計の欠陥車なのです。
しかしそれで良いです

何故ならそれは挑戦した結果だからです。
この設計を始める時、担任はこう言いました。
「ミニマム(最小)に設計せよ

ぱっちぃカーは目標質量を100kgとし、ホイールベース(前後輪間の距離)、トレッド(左右輪間の距離)を最初に決め、可能な限り荷台を低くするようにと言う条件を出し、更に予算を最初に提示しました。
設計者は可能な限り軽く、小さく、安く作ることを求められたのです。
これは設計の仕事では実に当たり前の事です。
なんの条件もなく壊れない車を緩〜く作ることなど実は簡単な事なんです。
設計者たちは挑戦しました。
そして失敗しました。
質量も目標を14kgオーバーしました。
実はこれ、すべて担任のシナリオ通りです

これだけの条件で初めて設計する物が完璧なはずがない事を私は知っていました。
目標質量の100kgもいけそうでいけないラインをわざと狙いました

これによって最後に何故壊れたか。どうすれば14kg軽くできるか。
メンバーは自分たちの設計の結果を検証することが出来ました。
そしてやり直しのチャンスもなく、悔しい想いを持ったまま社会へ出ていきます。
エンジニアは常に悔しくて口惜しいものです。
エンジニアはいつも復讐に燃えています。
エンジニアのたまご、いっちょあがりです


『ぱっちぃカー』プロジェクトはこれで終りますが、設計に終りはありません。
メンバー達は4月から、それぞれの会社でリベンジをかましてくれる事でしょう。
以上、担任中島がお届けしました〜
おしまい

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