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【車輌製作プロジェクト】風洞試験 詳しい解説

2013年08月07日 【車輌製作プロジェクト】風洞試験 詳しい解説

遅くなりましたが7/26の風洞試験の様子をお伝えします。
130726_02-Rszd静岡県御殿場市にあるムーンクラフト株式会社にお邪魔しました。

車両製作担当はこちら、
2年生3Kトリオです。
プリウスで来た!




-S

本日の試験で使用するのはこちら、本校メイカーズラボの3Dプリンターを駆使して製作した現行型MC−090の1/4スケールモデルです。
サスペンションアームなどはアルミの板をレーザーカットで、ウィング(翼)はワイヤーカットで製作しています。
ボディを剥がすと内側には本物と同じ形のモノコックフレームやエンジンなどがあります。

風洞の詳しい解説

130726_01

風洞はリング状になっており、反対側には大きな電動ファンがついています。
画面左から出た風は右側の穴に吸い込まれ一周してまた出てきます。
車が走っている時、空気と同じ速さで地面も動いているはずなので、それを再現するために地面はムービングベルトになっています。
少し難しい話になりますが、風を流すと壁や地面の近くには流速の遅い層ができてしまいます。
これを「境界層」と言います。
ですが本物の車が元々止まっている空気の中を移動する場合、このような事は起こりません。
そこで、ムービングベルトの直前に穴を開け、大きな吸引器で境界層を吸い込み、モデル周りの流速を一定にする工夫がされています。
画面左端の真ん中らへんから延びるコの字型のパイプは気流の速さを計るピトー管です。


試験で何を調べるか


風洞試験の目的は、車体が空気中を移動した時に発生する抗力揚力を知る事です。
これはコンピュータによる解析でも知る事が難しい項目です。
また、実際に走って測定する事も困難です。他のさまざまな現象がノイズとなってしまうためです。
ですので飛行機や車の開発には今だにこの様な風洞試験は欠かせません。
さて、抗力揚力とは何でしょうか。
車が前から風を受けると、反対側に押される事は想像がつくと思います。
この様に、風の流れ(走る方向)と平行に発生する力を抗力と言い、空気による抗力は空気抵抗などとも呼ばれます。
一方、風の流れと直角方向に発生する力が揚力です。
(こちらは空気による力に限った呼び方です。)
風の流れを直線だとすると、「直角方向」とはその直線を軸にぐるっと一周、いろんな方向に発生することになります。
ですが車は基本的に左右対称形状ですので、左右方向成分は左右で打消し合い、上下方向成分のみが残ります。これが揚力となります。
飛行機は後ろに向かってジェット噴射しているのに何故上に飛んでいくのか、というと、翼によって重力を上回る上向きの揚力を発生させているからです。

抗力
揚力が発生する原因は一つではありませんが、風洞試験では原因はさておき直接その値を測定します。

風洞試験模式図-Rszd




図の様に、揚力は前輪と後輪の位置、2カ所で測定します。

走行する車には色んな力が働きますが、そのうちドライバーが意図してコントロールできるのは、
進む力(駆動力)、止まる力(制動力)、曲がる力(旋回力)の3つだけであり、これら3つは全てタイヤと地面との摩擦力によって得られます。
摩擦力は概ね荷重に比例して大きくなりますから、より多くの荷重を発生させた方がこれらの動作を素早くできる、つまり速く走れることになります。
その為に揚力を利用するわけですが、前輪と後輪にそれぞれどのくらいの揚力が加わっているのかを分けて知る必要があります。130726_07-Rszd

上の図では省略しましたが、抗力についても実は3カ所で測定しています。
車体、前輪、後輪です。
車体にくっついている様に見えますが、実は車輪は横から延びている棒によってあるべき位置に置かれているだけなのです。
ボディは上からワイヤーによって吊るされているだけです。
そうしなければボディにかかる揚力は地面からの垂直抗力によって相殺されてしまうので計れませんし、空気にまつわる性能を知るためには車輪の転がり抵抗など空気によるもの以外の抗力を差し引く必要があるからです。
(ディスプレイ用にタイヤを車体に付ける事も出来る様になっています。


試験の様子

130726_10


車体を風洞に据え付けたら、いよいよ試験開始です。
まずは風を流さずにタイヤを転がし、タイヤの転がり抵抗を計ります。
次に風を流して測定開始です。
測定自体はほんの10秒ほどで完了します。

風洞試験では結果を測定すると書きましたが、原因を知る手がかりとして空気の流れ方を視覚的に観察できる貴重な機会でもあります。
130726_05
観察には棒の先に毛糸(タフト)のついたタフト棒や

130726_11


先端から煙(灯油の蒸気)の出る煙発生装置を使用します。


130726_03-Rszd
由良先生の解説を真剣に聞くメンバー

BlogPaint



測定の結果はこの様に表示されます
CL:揚力係数(全体)
CLf:揚力係数(前輪位置)
CLr:揚力係数(後輪位置)
CP:揚力中心
CD:抗力係数
CDボディ:抗力係数(ボディ)
CDフロントタイヤ:抗力係数(前輪)
CDリアタイヤ:抗力係数(後輪)

先ほど直接値を測定と書きましたが、コンピュータで自動的に係数の形にして出力します。
力の値はモデルが大きくなれば大きくなりますが、係数はモデルの縮尺に関係しません。

130726_09-Rszd

130726_06


セッティングを変えて何度か測定を繰り返します。
ほんのわずかな調整で結果に影響するのが見え、とても楽しいです。
あんな風にしたらどうなるかな、こんな風にしたらどうなるかな、などなど興味が尽きません。
もし、自分の家に風洞があったらずーっとこもってしまいそうですね

色々なセッティングでデータを取り、そのうちこのボディの最も良い状態を基準にして新型ボディを開発します。
このボディよりも少しでも性能の良いボディを開発していきたいと思います。

経過はまたこのブログでお知らせします

この日使った風洞モデルは現在八王子キャンパス メイカーズ・ラボに展示してあります。
ご覧になりたい方は是非、オープンキャンパス+体験入学へご参加ください。


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