CADって何?
2012年02月09日 CADって何?
こんにちは、CAD設計製図科の中島と申します。
数年前にものづくりの現場から日本工学院へやって来ました。
宜しくお願いします!
さて、CADと言うとなんとなく
こんな感じで
こんな感じで
こんな感じ
というイメージは随分浸透しているのですが、教育現場で仕事をするようになって実際の所「CADって何なのか」に対する一般の理解が十分普及していないことに気づかされます。
写真に写っている彼らは一体何をやっているのでしょうか。
今日はこの問いに答えたいと思います。
少し長くなりますが興味があれば是非お付き合いください。
〜「デザイン」と「design」の違い
「CAD」とは「Computer Aided Design」の略で、「コンピューター支援“design”」と訳せます。
designを英和辞書で引くと「設計」「計画」「意匠」といった意味であることがわかります。
ところで、時々次のような会話を耳にしませんか。
「この製品、デザインは良いんだけど使いにくいよね」
ここで言う「デザイン」とは何の事でしょうか。
もし「デザイン」が「設計」と言う意味ならば、使いにくい製品の設計が優れていると言えるでしょうか。
この場合発言者はたぶんもっぱら美術的な美しさ、スタイリング、意匠のことを言っているのだと考えられます。
日常会話として全く違和感はないし、間違った日本語だとは言えません。
しかし、それはあくまで日常会話としてはです。
これからものづくりのプロになろうとする方は、日本語における「デザイン」の用法は少々特異であることを知っていなければなりません。
サンティッロ先生も指摘されていましたが、ものづくりの分野でいう「design」は少々ニュアンスが違います。
CADとは何かを理解するためには、designとは何かを一応は理解する必要がありそうです。
〜「CAD」と「CG」の違い
いったん別な視点から。
「CAD」と「CG(Computer Graphics)」、どちらもコンピューターを使って立体を表現する事が出来ますが、その違いは何でしょうか。
私はCGに関してはずぶの素人ですが、一つだけ言えることがあります。
それはCGはそれ自体が作品であり、成果であり、目的であると言うことです。
CADはまったく違います。CADソフトによって描かれた図面や3Dデータはそれ自体は目的ではなく、製品を作るための手段に過ぎません。
CADデータの完成はものづくりのプロセスのほんの始まりに過ぎません。
このことは「design」を理解するための鍵にもなります。
〜「絵に描いた餅」に意味はない
という事は、実際に作っても機能が満たせないもの、通常の使い方で壊れてしまうもの、そもそも作る事が不可能なもの、またはそれらの検討がなされていないものをCADで描いて、それがどんなに美しくカッコ良くてもまったく何の意味もありません。
何故ならCADデータはそれ自体が目的ではないからです。
〜「design」とは
CADの「D」は「この形で壊れないか」「作れるのか」「どうっやって作るのか」「どうやって組み立てるのか」「どうやって部品を運ぶのか」といったこと、実際にものを作る手段の全てを含めてのdesignのことなのです。
したがって、製品をdesignするためには色々な作り方、作る道具の特性、材料の特性、形状の特性などなどなど、実にさまざまな事を知っていなければなりません。
このdesignが出来なければせっかくのコンピューターの支援(つまりCAD)も活かすことは出来ません。
〜CATIAによるdesign例
ではほんの一例としてですが、先の卒業展で金賞を受賞した「エコランカー」を例に、本校で使用しているCATIA V5というCADソフトを使ったdesignの実際を紹介します。
そのエコランカーはこんな形をしていますが、これはどのようにdesignされたのか、10000倍速くらいでお見せします。
一見適当に粘土をこねて作った様な形ですが、形状を作る前になんだか細かい直線や曲線、点や四角形をたくさん描いている事が解ります。
これらの要素は幾何学的な位置関係(ジオメトリーと言います)を正確に定義するためのものです。
ドライバーや車輪を覆う事が出来るか、強度的に成立するか、と言った製品としての機能は当然のことですが、同様に重要なことは作る事ができるのか、ということです。例えばこのボディーはFRP(強化プラスチック)で作りますが、ある方向に型が抜ける形状でなければ実物を作る事ができません。ですからある方向に対し、一定以上の抜き勾配を設ける必要があります。
また、窓の部分はポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの透明な樹脂板で製作しますが、この時平面に展開できる形状でなければ熱をかけて成型する必要が出てきます。これには手間はもちろん、コストもかかります。
今回はその工程を省略するため、板を曲げるだけで作れる形になっています。
それらの条件を幾何学的に、正確に定義するために描かれたのが細かい点や線なわけです。
これらの要素一つ一つが、この位置で良いのか、何故この形なのか、といった検討を経て決定されています。
この様に、実際にある機能を持った製品を作るには、ただただ「デザイン」するのではなく、種々様々な条件(要件と言います)を織込み、あくまで実現させるための「design」をしなければならないのです。
〜「CAD」とは何か
上の例はほんの序の口ですが、CADソフトはdesignの為に便利な機能が満載された道具であることが何となく理解していただけた事と思います。
しかしあくまで「支援」の道具ですから、これを使いこなすには当然ものづくりについての深く広い理解が必要になります。
それは底なしに奥の深い世界ですが、それだけに創造的で遣り甲斐のある仕事でもあります。
「CAD」から「A」の文字が無くなるまで、「design」は人間だけに出来る創造的な仕事であり続けることでしょう。
〜日本工学院では
CADソフトの操作自体は実はそんなに難しくありません。
私は2か月ほど(←長い方)で習得し、現場に放り出され、今では「先生」です。
では2年間もある学校生活で何を学ぶのか。
日本工学院では、あくまで「ものづくりのためのCAD」を実践します。
ソコにこだわります。
ソコが売りです。
「絵に描いた餅」は描かせません。
CADで描いたものは責任を持って実物を作っていただきます
もちろん、そのための方法も学んでいただきます
(中島)
数年前にものづくりの現場から日本工学院へやって来ました。
宜しくお願いします!
さて、CADと言うとなんとなく
こんな感じで
こんな感じで
こんな感じ
というイメージは随分浸透しているのですが、教育現場で仕事をするようになって実際の所「CADって何なのか」に対する一般の理解が十分普及していないことに気づかされます。
写真に写っている彼らは一体何をやっているのでしょうか。
今日はこの問いに答えたいと思います。
少し長くなりますが興味があれば是非お付き合いください。
〜「デザイン」と「design」の違い
「CAD」とは「Computer Aided Design」の略で、「コンピューター支援“design”」と訳せます。
designを英和辞書で引くと「設計」「計画」「意匠」といった意味であることがわかります。
ところで、時々次のような会話を耳にしませんか。
「この製品、デザインは良いんだけど使いにくいよね」
ここで言う「デザイン」とは何の事でしょうか。
もし「デザイン」が「設計」と言う意味ならば、使いにくい製品の設計が優れていると言えるでしょうか。
この場合発言者はたぶんもっぱら美術的な美しさ、スタイリング、意匠のことを言っているのだと考えられます。
日常会話として全く違和感はないし、間違った日本語だとは言えません。
しかし、それはあくまで日常会話としてはです。
これからものづくりのプロになろうとする方は、日本語における「デザイン」の用法は少々特異であることを知っていなければなりません。
サンティッロ先生も指摘されていましたが、ものづくりの分野でいう「design」は少々ニュアンスが違います。
CADとは何かを理解するためには、designとは何かを一応は理解する必要がありそうです。
〜「CAD」と「CG」の違い
いったん別な視点から。
「CAD」と「CG(Computer Graphics)」、どちらもコンピューターを使って立体を表現する事が出来ますが、その違いは何でしょうか。
私はCGに関してはずぶの素人ですが、一つだけ言えることがあります。
それはCGはそれ自体が作品であり、成果であり、目的であると言うことです。
CADはまったく違います。CADソフトによって描かれた図面や3Dデータはそれ自体は目的ではなく、製品を作るための手段に過ぎません。
CADデータの完成はものづくりのプロセスのほんの始まりに過ぎません。
このことは「design」を理解するための鍵にもなります。
〜「絵に描いた餅」に意味はない
という事は、実際に作っても機能が満たせないもの、通常の使い方で壊れてしまうもの、そもそも作る事が不可能なもの、またはそれらの検討がなされていないものをCADで描いて、それがどんなに美しくカッコ良くてもまったく何の意味もありません。
何故ならCADデータはそれ自体が目的ではないからです。
〜「design」とは
CADの「D」は「この形で壊れないか」「作れるのか」「どうっやって作るのか」「どうやって組み立てるのか」「どうやって部品を運ぶのか」といったこと、実際にものを作る手段の全てを含めてのdesignのことなのです。
したがって、製品をdesignするためには色々な作り方、作る道具の特性、材料の特性、形状の特性などなどなど、実にさまざまな事を知っていなければなりません。
このdesignが出来なければせっかくのコンピューターの支援(つまりCAD)も活かすことは出来ません。
〜CATIAによるdesign例
ではほんの一例としてですが、先の卒業展で金賞を受賞した「エコランカー」を例に、本校で使用しているCATIA V5というCADソフトを使ったdesignの実際を紹介します。
一見適当に粘土をこねて作った様な形ですが、形状を作る前になんだか細かい直線や曲線、点や四角形をたくさん描いている事が解ります。
これらの要素は幾何学的な位置関係(ジオメトリーと言います)を正確に定義するためのものです。
ドライバーや車輪を覆う事が出来るか、強度的に成立するか、と言った製品としての機能は当然のことですが、同様に重要なことは作る事ができるのか、ということです。例えばこのボディーはFRP(強化プラスチック)で作りますが、ある方向に型が抜ける形状でなければ実物を作る事ができません。ですからある方向に対し、一定以上の抜き勾配を設ける必要があります。
また、窓の部分はポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどの透明な樹脂板で製作しますが、この時平面に展開できる形状でなければ熱をかけて成型する必要が出てきます。これには手間はもちろん、コストもかかります。
今回はその工程を省略するため、板を曲げるだけで作れる形になっています。
それらの条件を幾何学的に、正確に定義するために描かれたのが細かい点や線なわけです。
これらの要素一つ一つが、この位置で良いのか、何故この形なのか、といった検討を経て決定されています。
この様に、実際にある機能を持った製品を作るには、ただただ「デザイン」するのではなく、種々様々な条件(要件と言います)を織込み、あくまで実現させるための「design」をしなければならないのです。
〜「CAD」とは何か
上の例はほんの序の口ですが、CADソフトはdesignの為に便利な機能が満載された道具であることが何となく理解していただけた事と思います。
しかしあくまで「支援」の道具ですから、これを使いこなすには当然ものづくりについての深く広い理解が必要になります。
それは底なしに奥の深い世界ですが、それだけに創造的で遣り甲斐のある仕事でもあります。
「CAD」から「A」の文字が無くなるまで、「design」は人間だけに出来る創造的な仕事であり続けることでしょう。
〜日本工学院では
CADソフトの操作自体は実はそんなに難しくありません。
私は2か月ほど(←長い方)で習得し、現場に放り出され、今では「先生」です。
では2年間もある学校生活で何を学ぶのか。
日本工学院では、あくまで「ものづくりのためのCAD」を実践します。
ソコにこだわります。
ソコが売りです。
「絵に描いた餅」は描かせません。
CADで描いたものは責任を持って実物を作っていただきます
もちろん、そのための方法も学んでいただきます
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